アニメ「やがて君になる」について。2018年10月から放送された。原作コミックは全8巻。また「佐伯沙弥香」を主役にしたスピンオフ小説全3巻と、公式アンソロジーコミックが2冊あり。また、作中に出るキャラクター名の敬称は略して書きますのであしからず。
アニメ「やがて君になる」の感想
この感想にはネタバレを含みます。作品の面白さを損なわないように配慮してはいるつもりですが、少しでもネタバレが嫌な方は、感想を読まないことをオススメします。加えて、視聴直後にテンションが上りまくった状態で書いているので、見当外れな内容になるかも知れませんが、ご容赦下さい。
この作品は、いわゆる「百合」系です。とはいえ基本的にプラトニックな関係なので「エロ色」はありません。「百合だから観ない」派の人もいるかも知れませんが、普段、「百合」系を選ばない人にもオススメしたい作品です。私自身も「百合」に抵抗こそ無いですが、好んで選ぶ人ではありません。某YouTubeのアニメ関連動画でオススメされていたのがキッカケで視聴してみて、ガッチリ心を掴まれました。
作画のタッチが作品世界にピッタリだと思いました。あと、オープニングアニメも曲も印象的で好きです。私はオープニングやエンディングを飛ばすことが多いですが、この作品はオープニングを飛ばさず、毎回観てしまいます。それと、キャラの揺れ動く感情を「瞳」の変化や微妙な手の仕草で表現している所も印象的でした。
イントロダクション。主人公「小糸侑(こいとゆう)」は高校1年生。周りの友人とは違い「人に恋い焦がれる」という感情が理解できないコトに、密かに悩んでいる。そんな侑が出会った、高校2年の先輩ヒロイン「七海燈子(ななみとうこ)」。彼女の「今まで、好きと言われてドキドキしたことが無い」という話を聞いて、誰にも言えなかった「特別って気持ちが分からない」ことを相談する。そんな侑に突然、「君のこと、好きになりそう」と告げる燈子。混乱する侑・・・。
「二人の距離」。この物語は、登場人物の心理的な距離感を、すごく丁寧に描いていると思います。好きだから近づきたいけれど、近づき過ぎると嫌われたり、今の心地よい関係が壊れるのが怖かったり。お互いの本心が分からず、すれ違ったり戸惑いながらも、近づいたり距離を取ったりを繰り返して、良好な関係を壊さないように試行錯誤を繰り返す・・・。本作の場合、その多くは「近づき過ぎないように自制する燈子」と「離れないように燈子を気遣う侑」という図式だと感じました(違ってたらゴメンなさい)。その反面、時として思いが暴走し、抑えきれない思いが溢れてしまったり・・・。また、燈子の親友「佐伯沙弥香(さえきさやか)」は、関係が壊れないように、燈子との距離を一定に保つのに一生懸命です。ただアニメ終盤、侑がその微妙な距離感を壊してでも、燈子を変えようと動き出した所で終わってしまいますが・・・。
私は、この作品の繊細な心理描写が、とても好ましく感じました。最近になって、ラブコメ作品を多く視聴するようになりましたが、いわゆる「ハーレム系」にありがちな、「何故か主人公がモテる」ようなご都合主義の展開よりも、こういう作品の方が「自分の性に合っている」と思いました(とは言え、それ系で好きな作品も多々あり)。
主人公の侑は「恋する気持ちが分からない自分は異常だ」と思っているようですが、私はそうは感じませんでした。燈子に対してはクールな態度が多いですが、心が動かない相手に対しては、あんな真摯な態度はできるモノでは無いと思うのです。優柔不断で決断が苦手な性格に加えて、ただ単に「恋する相手に恵まれなかった」だけではないでしょうか? だから、普通は「好き」と自覚するような状況ですら、それを自己否定するような思考になってるような・・・。それに、他人と違うことは変でもなんでも無いと思うんですよね(まあ、そんな私も「変わり者」だと良く言われるし、それをハッキリ自覚していますが・・・)。
アニメで描かれる範囲。アニメでは、原作5巻の前半までの内容を描いて終了しています。どうして、残り3巻と半分の内容はアニメ化されないのでしょうか? メチャクチャ気になる中途半端な所で終わってますけど!? この良好な作画と演出で、物語の最後まで見せて欲しいんですが!! 残り3巻半だと、TVで1クールでは尺が少し余るかもしれませんが、劇場版にするなり、OVA(オリジナルビデオアニメ)にするなり、TVスペシャル版にするなり、スピンオフ小説版も1部含めて制作するなりと、方法は無かったのだろうか? 原作人気もある作品だし、かなり勿体ないと思うのですが・・・。
恋愛系作品が好きな人なら、「百合」系が苦手な人でも楽しめる良作だと思います。人によっては、コレがきっかけで「百合」作品が好きになる位の魅力があると思います。かなりのオススメ作品です。
続きを原作コミックで読んだ寸評
この寸評にはネタバレを含みません。ストーリーにはふれずに、満足度を中心に書きます。
どうしてもアニメの続きが気になり、5巻から最終8巻までをKindleで購入して読みました。とても面白かったです。好きな終わり方でした。アニメ版が好きな方なら、原作を買って満足するのは間違いないと思います。本当に良い物語でした。
それと、原作を読んで、よりアニメ版の続編を観たくなりました。私はコミックだと「サラッと」流し読みしてしまう癖があるので、アニメの表現と演出で、より作品世界に浸りたいと思いました。本当にこのアニメは良作だと思います。繰り返しますが、アニメで最後まで観せて欲しい。
追記。その後、1巻から4巻までをKindleで追加購入し、原作を全巻揃えて読みました。アニメは原作に忠実なだけで無く、アニメ独自の演出も加えてあり(しかも原作の内容がより良く伝わるような演出になっていて素晴らしい!!)、本当に上質な出来のアニメだと再確認しました。また後日余裕が出来たら、スピンオフ小説も購入して読みたいと思います。繰り返しになりますが、本当に最後までアニメ化されないのは勿体ない。続編の制作を強く強く希望します!!
追記その2。更にその後、スピンオフ小説「やがて君になる 佐伯沙弥香について」や公式アンソロジーコミックもKindleで追加購入して読みました。個人的に小説の3冊が好きでした。沙弥香の心情が丁寧に描かれていて、原作ファンなら自信を持ってオススメできます。アンソロジーコミックはまあまあ。駄作とまでは思いませんが、何度も読み返すほどの魅力は感じなかかったので、興味があるならレンタルなりで目を通せば十分だと思います。
Kindle電子書籍版の紹介
原作コミックは全8巻。また「佐伯沙弥香」を主役にしたスピンオフ小説全3巻と、公式アンソロジーコミックが2冊あり。
やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(2) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(3) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(4) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(5) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(6) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(7) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる(8) (電撃コミックスNEXT) Kindle版
やがて君になる 佐伯沙弥香について (電撃文庫) Kindle版
やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) (電撃文庫) Kindle版
やがて君になる 佐伯沙弥香について(3) (電撃文庫) Kindle版
やがて君になる 公式コミックアンソロジー (電撃コミックスNEXT) Kindle版
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